労働保険や社会保険については加入・脱退について明確な要件がありますが、解雇については正直基準が曖昧です。
労働契約法によれば「解雇は客観的合理的理由を欠き、社会通念上の相当性が認められなければ権利濫用により無効になる。」という一文があるだけです。
労働法にまつわる情報はインターネットを通じてたくさん共有されていますが、特に解雇に関してはケースバイケースで一概に判断できないことが曖昧さに拍車をかけていると感じます。
よく就業規則の解雇規定に該当すれば解雇できると思われがちですが、その規定内容自体に合理性や社会通念上の相当性があるかは別問題であり、仮に該当した場合でも経営者には解雇回避努力が生じる等、上記ご相談があった場合は個別具体的に対応していくこととなります。
採用条件となる重要な経歴・資格に詐称があった場合も経営者や他の従業員に対して暴行した場合でも同様であり労働法が守っているのは労働者であり経営者ではありません。
とはいえ、経営者として泣き寝いりする訳にもなりません。
労働基準法上、解雇理由はどうあれ30日以上前に解雇予告をするかまたは解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)を支払って解雇しなければなりませんが労働基準法に照らし例外があるとすれば解雇予告除外認定制度があります。
この手続きによる認可が下りれば、30日以上前の解雇予告もしくは即日解雇となった場合に解雇予告手当を支給する必要がなく、いわば行政機関からお墨付きを得られたものとなります。
労働契約法の客観的合理性や社会通念上の相当性を担保するものとなり得ますし、仮に解雇に至った従業員の方との民事上の争いになった場合には労基署から解雇予告除外認定書を交付されていることは大きな意味合いを持つものと考えます。
解雇予告除外認定制度は労働基準法制定の昭和22年からすでに70年を超える歴史を有する制度であり、本来解雇予告除外認定が受けられる事案でありながら通常の解雇手続きで処理されている案件も多い中、該当する可能性があれば検討の余地はあると考えます。
また、長期雇用による年功序列でなく国の政策として働き方改革の一環である同一労働同一賃金(≒職務給)を推し進めるのであれば雇用の流動化は避けては通れず、今後は解雇予告手当やADR(裁判外紛争解決手続)による和解の他に労使双方にとって金銭的解決策(解雇事由別に定めた具体的金額や直近の総支給額or基準内賃金に連動したパーセンテージ等)を含めた解雇基準の更なる法的明確化が必要であると考えます。