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最低賃金と月給制

最低賃金は都道府県別に設定されており、毎年10月頃に引上げられています。特に近年の引上げ幅は著しくコロナ禍前、2019年の島根県最低賃金790円と比較して2024年は962円と5年間で200円弱の大幅な引上げとなっています。今後の引上げについては衆議院選挙でも争点のひとつとして注目されており、政権与党は2030年代半ばには全国加重平均で1,500円を達成しようとしています。これにつき、経団連は中小企業の経営に配慮しながら進める必要があると強調しており、できるだけ上げていこうという取組は大事だがあまり乱暴な議論はすべきではないし、ふさわしくないとしています。

とはいえ、国が決めたルールには違反できません。最低賃金は時間給を基準としており時給制ではイメージしやすいのですが、月給制でも最低賃金法違反が生じる可能性があり注意が必要です。先般ご相談があった事例をご紹介します。


Q.当社は1年単位の変形労働時間制を採用しています。繁忙期と閑散期で月毎の労働時間が異なり、繁忙月は180時間、閑散月は160時間となり年間平均すると月平均所定労働時間は170時間となります。月給は170,000円となりますが月平均所定労働時間の170時間で除すと時給1,000円なので最低賃金には違反しないという認識でよいでしょうか?


A.最低賃金法に違反します。賃金には賃金支払5原則があり

①通貨で

②直接労働者に

③全額を

④毎月一回以上

⑤一定の期日を定めて

支払う必要があります。

今回のご相談では、③に違反することとなります(若干④もからみます)。賃金は毎月精算する必要があり、賃金締日にもよりますが1ヵ月働いた分はその月分を当月ないし翌月に受け取る権利が労働者にはあり、使用者は支払いを先延ばしできません。毎月精算するということは、繁忙月に180時間働いたなら実働時間分を一旦精算する必要があります。

962円(島根県最低賃金)×180時間=173,160円>170,000円(月給)・・・最低賃金法違反!

変形労働時間制は繁忙期と閑散期をならして、週平均が法定労働時間である40時間以内に収めることができれば、仮に特定の週で40時間を超過しても割増賃金を支給する必要がないことが経営者としてはメリットです。ただし変形労働時間制と割増賃金、最低賃金と賃金支払5原則の考え方は別問題となりますので注意が必要です。


 

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