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定年後の賃金は何割減が妥当か

高年齢者雇用安定法では

① 65歳までの定年引上げ

② 定年制自体の廃止

③ 60歳定年で65歳までの継続雇用制度の導入

を義務化していますが、実務的には③が多いのではないかと思います。
一般的に③の実務上は一旦雇用契約を終了し、再雇用契約を結ぶこととなり契約の結び直しに際して賃金引き下げを行います。

何故かというと

・老齢化による作業効率の低下
・年金支給による生活補填の開始
・雇用保険からの雇用継続給付
・在職老齢年金と雇用継続給付による賃金調整
・退職金支給による老後生活の安定化
・月変によらず即標準報酬月額の改定が可能

等が挙げられます。
色々な要素があるのですが、引き下げ幅が大き過ぎると紛争に繋がるようです。
働き方改革の一環である同一労働同一賃金に即して、定年後の仕事内容が変わらないにも関わらず賃金を引下げることに意義を唱えて裁判が行われました。


■長澤運輸事件


定年前と定年後の各種手当の支給、不支給について争われました。基本給については具体的に争われませんでしたが総支給額は21%減の79%で妥当との判断となりました。


■名古屋自動車学校事件


長澤運輸事件と異なるのが手当や総支給額でなく、基本給について争われたことです。本来は会社独自に設定する基本給に行政が介入する余地はないのですが、司法が介入した事件となります。
名古屋地裁と名古屋高裁は基本給について定年退職時の60%以上を妥当と示しましたが最高裁は「原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法がある」とし名古屋高裁に差戻しました。係争中の案件ですが、最終判断は名古屋高裁に委ねられましたので今後どのようになるのか注視したいと思います。


■個人的見解


名古屋自動車学校事件では地裁と高裁が示した60%を最高裁が差し戻しました。60%という数字が良いか悪いか正直わかりませんが、労基法が示す生活補償である休業手当の視点によれば最低でも60%という判断には納得がいきます。また雇用保険制度の一端を担う「高年齢雇用継続給付金」の支給要件は定年到達時の61%〜75%未満が基準です。個人的見解としては雇用継続給付金の制度自体を否定することになりかねないため、名古屋高裁は少なくとも75%を下回る判決は出さないように思います。また長澤運輸事件の79%、労基法の休業手当60%、高年齢雇用継続給付金の75%いずれも基本給でなく総支給額を指しています。最高裁が基本給60%を名古屋高裁に差し戻したとはいえ、これらを総合的に勘案すれば基本給だけで70%を超えることはないのではと考えます。

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